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| VOL.29 | ||||
| Its' mine. 私の段ボール アンティークの買付け | |||||
| 【Its' mine. 私の段ボール(小説編)】 これは、実際に起こった話にもとづいて書かれたものです… ───間もなく夕方を迎えるオックスフォードストリート。 通りは、買い物をするイギリス人や、世界各国からの観光客でごった返していた。 そのとき、オックスフォードストリートの、グレイズのある方向からゴミを集め る巨大な清掃車がやって来るのが見えた。清掃車より一足早く、清掃作業をする 人たちが足早にこちらへ近付いている。 私は、迫り来る巨大な清掃車と、目の前にある「段ボール」の山を何度も見比べ ていた。青い作業着の清掃員がその「段ボール」の山に手をふれ、その山を清掃 車の方に動かそうとしたその時、私はありったけの英語の知識を総動員して、清 掃員に向かって叫ぼうとしていた。 「その段ボールは私のものよ! 誰も手をふれないで。焼却なんかしたら絶対に許さないんだから!」 とっさに出て来た英語は ’Its' mine.’ 何年か前に留学したロンドンの語学学校では、段ボールについては何も教えてく れなかったからだ。そもそも、普通に生活をしていたら、段ボールというのを英 語でなんと言うか考えることも滅多にないだろう。 でも、とにかく、私は私の段ボールを守ることに成功した。 さて、次はこの段ボールの山をなんとかしてホテルまで運ばなければならない。 一瞬、目の前が真っ暗になった。「こんなもの、とても地下鉄にはのせられない わ」第一、地下鉄の駅まで運んでいくことだってできやしない。 目の前をキャブが通り過ぎていった。ロンドン名物のタクシーである。ご存知の 方も多いと思うが、ロンドンのタクシーは座席が広く、天井が高い。日本の軽ト ラックの荷室ほどもある。何台かのタクシーを見送ってから、私は思いきって手 をあげてみた。 止まったタクシーに「この荷物をのせたいの」と言うと、運転手は「わかった。 ここは交通量が多くて渋滞しているから、その建物のわきに回るから待っていろ」 と言った。その運転手の言った通りの場所でしばらく待っていたが、いつまでた ってもそのタクシーは現れなかった。 あきらめて次のタクシーに手をあげた。その新品のタクシーの運転手は黙って後 ろを指差した。そこには、古い(ぼろい)オースチンのタクシーがいた。古いオ ースチンのタクシーは素晴らしい。なんでものせてくれる。きっと、ロンドン動 物園の象だって、手をあげることができたら古いオースチンのタクシーは止まっ てくれるだろう。 そうして、私は古いオースチンにひと抱えもある段ボールの山を二つと、「オグ ラアンティークス」のオーナーと私の執事(夫ともいう)を押し込め、手を振っ たのだった。 「しっかりホテルまで運ぶのよー」 【Its' mine. 私の段ボール(実践編)】 イギリスへアンティークの買付けに行ったとき、フェアやマーケットで、商品と なるアンティークをたくさん買うこと以外に大切なことが2つあります。 それは、新聞集めと段ボール拾い。 もちろん、イギリスでは段ボールも売っているし、新聞は街角のスタンドで買う ことだってできます。でも、陶器やガラスを梱包するための新聞を普通に買って いたのでは商売になりません。10ポンドで仕入れたグラスの梱包に1ポンドで 買った新聞を使っていたら、仕入原価は11ポンド。ディーラーは品物が1割高 くなって売りにくくなるし、お客さんだって新聞紙に1割払うのは納得できない でしょう。 ですから、新聞と段ボールは「ただ」で集めるのです。 日本では、驚くほど質のいい段ボールがスーパーへいくと山になって捨てられて います。 サイズ、頑丈さ、厚み、綺麗さ… どこをとっても完璧な段ボールが「ご自由にお持ちください」の貼り紙とともに レジカウンターの一角に置いてあるのを見ると、ついうっとりと目で追ってしま います。「いい段ボールねえ…」 新聞は、泊っているホテルのフロントに頼み込んで古新聞をもらったり、地下鉄 の入口に無料で置いてある「メトロ」を、駅員の目を盗んでひとつかみ持って来 たりします。あるいはショッピングセンターに行くと置いてあるショービズ用の 新聞。地下鉄に乗っていて、どこかのおじさんが置き去りにしていった新聞もも ちろんゲット。 新聞はそれほど苦労しないで集められるのですが、問題は段ボール。 私はいままでに何度もロンドンに行っていて、中国人に間違われたことは1度も ないのですが、スーパーに段ボールをもらいに行ったりすると「あなたは中国人 かしら?」と聞かれることがあります。別にスーパーの人が人種差別をしている わけではないと思います。きっと、中国人は段ボールをもらうのが普通だけれど、 「日本人は買うのが普通」と思っているのかなと想像しています。 ロンドンの大通りの脇道で、とてもいい段ボールが山積みになっているのをみつけ たことがあります。 「やったあ」と思って近付いてみると、それはなんとホームレスのお家でした。 オフィス街では、引っ越しや改装がねらいめです。 入口やドアの前に大きな段ボールを見つけたら、交渉が始まります。 まず目についた大きな段ボールを指差しながら、「その段ボールちょうだい」 いらないものなら、大抵は「いいよ」と言って手渡してくれます。 「もっとないの?」とここでたたみかけるのがコツ。 「部屋の中にまだあるよ」 「部屋の中にはいって持っていっていい?」と聞くと 「それはノーだ」と言われます。 「でも頂戴」 そうして、段ボールの脇で同僚と立ち話しをしていた親切なお兄さんに部屋中の 段ボールを全部持ってこさせたこともありました。これは、相手にしてみてもた だでゴミをリサイクルしてくれているのだから大歓迎のハズ。 日本のように、大型ディスカウントショップに行くと、いい段ボールや梱包材料 が売られている国でアンティークの買付けをするのなら、こんなことは必要ない でしょう。でも、イギリスで売っている薄い段ボールでは、陶器やガラスなどを 日本に送りだすのはちょっと不安。途中で割れるものが続出して、アンティーク の値段が跳ね上がってしまうのではないかと心配してしまいます。 段ボール拾いは、いいものを安く提供するための大切な企業努力。 私は誇りをもって楽しく段ボール拾いをしています。 【イギリスで段ボール拾いをする人のためのワンポイントアドバイス】 梱包材料に向いている段ボール ・服、カバンがはいっていたものは○ ・くだもの、ワインがはいっていたものは×弱い ・バナナの段ボールは丈夫だけど隙間があるから× ・綺麗なものがベストです。 ・大きさは、みかん箱の倍くらいのものがちょうどいいでしょう。 でも、大きすぎるものはカットして小さくすればいいし、 小さすぎるものは大きな段ボールの中に入れこにすればいいのです。 |
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