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| VOL.23 | |||||
| アンティークの神様 100年経ったものに魅力がある理由 | ||||
| 蒸し暑い日々が続いていますね。 今回はいつもと趣向を変えて、少ーし涼しくなるようなお話をお届けします。 アンティークの定義については、第3号で少し書きましたが、もう一度。 WTO(世界貿易機構)の規定『骨董品−関税定率法−税番99.06』によると、 「100年以上経過している物」をアンティークとしています。日本の空港で も、イギリスから買い込んできたものを税関に申告する場合、「アンティーク」 として申告するには、それが100年以上昔のものであることをなんとかして 証明しなければなりません。これが定められたのは1891年のこと。この規 定自体がすでにアンティーク!? じつは、今から千数百年の昔、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が平安の街を跋扈 していたころ、日本には、すでにアンティークの概念が存在していたらしいの です。 『日本文学大系』第19巻「お伽草子」上巻〈大正14年〉に『付喪神』とい うものが載っています。以下がその本文なのですが……『陰陽雑記に云ふ。器 物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑(たぶらか)す、これを付 喪神と号すと云へり。是れによりて世俗、毎年、立春に先立ちて、人家の古道 具を払ひ出だして、路吹に棄つる事侍り、これを煤払と云ふ。これすなはち百 年に一年たらぬ付喪神の災難にあはじとなり……』 「付喪神」は「つくもがみ」と読みます。付喪神はもともと九十九髪(つくも がみ)と書いたともいわれていて、『九十九髪は白髪を 示し、長年の年を経た ことを指す言葉』のようです。また、文中で「煤払(すすはらい)」という言 葉が出てきますが、これは「ごみ」とか「ほこり」のことではなくて、「聖な る」「神聖」「清浄」「清める」などを意味する「スス」のことではないかと 思われます。 この文章をやさしく言い直すと「100年経ったものには精霊がついて、そい つが災いをもたらすから99年めの暮れに捨ててスッキリしてしまおう」とい うことになります。これは、当時の富裕層である貴族たちのことを書いた文章 だと思うのですが、どうも当時の富裕層の日本人たちは古い物を大切にしてい なかった様にも読み取れます。 「100年経つと精霊がつく」ことを昔の日本人(の富裕層)はありがたく思 っていなかったのか、あるいはその当時の消費文化の担い手が、物が売れない と困るので、魑魅魍魎(ちみもうりょう)を信じている貴族達の間に、そんな 噂を流したのかもしれません。 いずれにしても、和物の世界はよくわかりません。 一方、私の好きなイギリスは、世界のゴーストの本場。 イギリス人たちは、古いものと一緒に、それについたゴースト達をも愛してい ます。私の愛読書の1つである、J・A・ブルックス『倫敦幽霊紳士録』には たくさんのゴースト達の住まい(?)が詳細な地図付きで紹介されています。 たとえば「泥棒市場」で有名なバーモンジー。 『Bermondseyの幽霊はパブに出るのが好きだ。 「角」亭(the Horns)はCrucifix Laneの、ロンドン 橋手前の高架線下にある。』ここには、小さな女の子の霊と老女の霊が取り憑 いていたそうです。小さな女の子の方は悪魔払い師に鎮められてしまったそう ですが、老女の方は無害だったために悪魔払い師も力を及ぼすことができず、 今でも壁をどすんと鳴らしたり、家具を動かしたりしているそうです。興味の ある方は、早朝の「泥棒市場」に出かける前にでもどうぞ。 ちなみにイギリスでのパブの営業時間は午後11時までです。 付喪神のように、物に取り憑くゴーストの話はないものかと探してみたのです が、ほとんど見当たりません。北ケンジントンの交差点にでる「幽霊バス」の 話のようなものはあったのですが、これは日本の付喪神とは随分様子が違うも ののようでした。 我が家にも100年以上を経た、「アンティーク」と呼べるものがいくつかあ りますが、それらは我が家に富みをもたらしてくれる大切なものたち。捨てて しまうなんて、とんでもありません。ときどき、箱の中から取り出して磨いて は「にまあ」と笑う…そんな私は、すでに誑(たぶらか)されているのかもし れません。 |
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