VOL.20

「西洋骨董」なのに ”メイド・イン・ジャパン” 
オールドノリタケ
 前回、ウエッジウッド展について書きましたが、見に行かれた方は展示品の中に
 少し変わった雰囲気のジャスパーウェアがあるのに気付いたかと思います。もし
 かすると違っているかもしれませんが、渋い緑色の地に、白い風景画が描かれた
 ティーセットだったように記憶しています。


 ウエッジウッドにしては、ポットの形も、描かれた風景画もどことなく東洋的な
 感じがするもので、「へえ、こんな感じのジャスパーもあるのか」と通り過ぎて
 しまいそうでしたが、説明の書かれたプレートをよく見ると、それにはウエッジ
 ウッドではなくて、「1910年代〜1920年代に日本で生産されたノリタケ」
 といったことが書いてありました。


 ノリタケ製のウェッジウッドだったのです。
 といっても、「贋作」という種類のものではなく、中国風に言うならば「倣製品」。
 陶磁器としての完成度がとても高いものです。


 本物のウエッジウッドのジャスパーと違って、ノリタケのウエッジウッドは「盛
 り上げ」という技法を駆使して作られています。「盛り上げ」は、ウエッジウッ
 ド風のものに限らず、ノリタケの製品で多用されている手法で、海外でもそのま
 ま「モリアゲ(MORIAGE)」で通用するほど有名なものです。


 「盛り上げ」は、簡単にいうと、ケーキにクリームでデコレーションを施してい
 くような方法で作られます。イッチンという描き用具を袋に取り付けて描かれる
 ので、「イッチン盛り」とか、「絞り描き」などともいわれています。


 ノリタケは、1876年(明治9年)森村市左衛門という人が東京の銀座に設立
 した「森村組」という貿易商社が前身となっています。森村組が設立された背景
 には、当時の諸外国との貿易不均衡を打開するための「外貨の獲得」という目的
 がありました。


 設立当初は、磁器や工芸品、骨董品の対米輸出を行っていましたが、そのうちに
 海外の万国博覧会で評価の高まりつつある日本製の陶磁器製品に着目し、磁器の
 輸出を専業とするようになりました。


 その森村組の自社製品開発を担って誕生したのが、のちのノリタケカンパニーで
 す。ノリタケカンパニーは、前身である「日本陶器合名会社」が1904年(明
 治37年)に名古屋市西区則武新町というところに設立され、その地名の「則武」
 が「ノリタケ」という商標の由来となっています。


 アンティークのなかに「里帰り品」という分類があります。
 「里帰り品」というのは、かつて日本で生産されて海外に輸出されたものが、近
 年になって再評価を受け、再び海外から日本に持ち込まれているもののことをい
 います。陶磁器では、伊万里や薩摩などが有名です。


 「アンティーク」ということは、「里帰り品」は日本製のものであっても「和物」
 ではなくて西洋骨董に分類されます。


 特に、ここ数年ブームの続いているオールドノリタケはアール・デコが人気の中
 心で、誰がみても「西洋骨董」で、むしろこれが1920年代の日本で作られて
 いたということを想像する方が難しい気がします。


 ノリタケ・アール・デコのテーブルウェアには「マヨネーズ入れ」など、かわい
 いデザインのものがあるので、私も結構気に入っています。


 中でも、私が好きなノリタケは、1923年にアメリカの建築家であるフランク・
 ロイド・ライトが帝国ホテルのレストランのためにデザインしたカップ&ソーサ
 ー&プレート。残念なことに、帝国ホテルは関東大震災で火災に遭ったため、そ
 のほとんどが焼失してしまい、現存するものは国内では数点を数えるのみとなっ
 ているそうです。


  先日「平和島古民具骨董まつり」でフランク・ロイド・ライトデザインのカッ
  プ&ソーサーを見つけました。会場を2周する間、興奮するのおさえて見てい
  たのですが、結局買いませんでした。


  「高かったから?」
  いいえ、安すぎたからです。