VOL.2

TWO DOGS
<アンティークレースにまつわるお話>
イギリスといえば真っ先に「税金」のことを思い出す人も多いのではないでしょうか。最近でも多くのロックミュージシャンたちが、重税を逃れてアメリカへ移住したりしていますが、昔のイギリス人もさまざまな税金に悩まされていたようです。

自分の家の「窓」の数によって税金が変わってくる。たくさんの「窓」があって日ざしの明るい家は税金が高い…これは本当の話です。ロンドンで2階建の観光バスに乗ったことのある人ならガイドさんのそんな話しを聞いことがあるでしょう。税金を取られないよう「窓」を塞いでしまった当時のままの家がロンドンにはまだ残っています。2階建てバスに乗ったら、是非「塞がれた窓」を探してみてください。

16世紀〜18世紀のヨーロッパでは、レースは宝石のように大変に高価でした。高価なだけでなく、地位や権力の象徴、今風にいえば貴族のステイタスを表すものでもありました。まだ写真のない頃のことなので、お金持ちの貴族は、画家たちに自分がレースを身に付けている姿をこぞって描かせたものでした。首にたくさんのひだのあるレースを付けた「肖像画」(一つの襟を作るのに大体30メートル位が必要だったそう)をご覧になったことがあると思いますが、あの細密画のようなレースの絵を、ただ細かいだけでなく「どこで作られたどんな種類のレースか分かる」ように描けない画家は仕事にありつけなかったそうです。

当時のレースは手作りで非常に高価であり、そのほとんどがヨーロッパ各地からの輸入品でした。輸入代金を支払うのも大変で、簡単に輸入できないようにするため、政府は高い関税をかけたり、輸入禁止にしたりしてしまいました。そうなると「密輸」ということを考える人が出てくるのが世の常で、17〜18世紀頃にはこんなことが実際に行われていたそうです。

二匹の同じ種類の犬を飼い、一方は丸まると太らせ、もう一方はろくに食事を与えずひどく痩せさせる。そして痩せた方の犬には、港から家までの道を憶え込ませる。太った犬の方は、殺してその皮を剥いでしまう。港に繋がれた船の上で、痩せた犬は、できるだけ多くの「レース」を全身に巻かれ、太った犬の皮を着せられる。そうして犬を放して家に帰らせる。

あるいは、外国にいった人が亡くなると、その人の「首」だけが本物で残りの体の部分は全てレースといった状態で死体を「輸入」するといったこともあったそうです。

ロンドンだったら間違いなく「ゴースト」になって化けてでそうな話しです。

16世紀〜18世紀、正確には1560年からフランス革命の起こる1790年までの230年間が手作りレースの最盛期でした。その頃の職人さん達は、子供の頃からレースを作る修業をしていたため、30歳になる頃には眼や神経をやられて、失明したり早死にしたりしたといわれています。

手作りと機械編みとを見分けるには、チュール(レースの地の部分)を見ます。チュールの目が均一なものは機械によって編まれたもの。不均一なものは手作りという風に分けられます。現在アンティークショップやマーケットで目にすることができるのは、ほとんどが機械編みのものです。どうしても手作りのレースを見たい方は、ロンドンにある「ヴィクトリア&アルバートミュージアム」に行くと実物を手にとって見られるそうなので、足を運んでみてはいかがでしょうか。